無意識に書いた日記

意識は少し高めです。

藻野多摩夫『オリンポスの郵便ポスト』感想

最近、暑くなってきました。
朝は蒸し暑さで目覚め、昼は純粋に暑く、夜はまーいやらしいような暑さ。
暑いことばかりで気が滅入ってしまう、今日この頃。
ようやく3月末に購入した『オリンポスの郵便ポスト』を読み終えました。
その感想を書きます。

※ネタバレを含みますので、気を付けてください。

 

 

では、まず読了後に思ったことから。

 

長い旅が終わりを迎える寂寥感っていいね。

 

切ないんです。主人公がこうしたいねって言っている矢先にその未来が閉ざされ

てしまいます。色々と理想を言って「あぁそうなってほしいな」と僕も思いまし

た。
最後に二人の願いがどちらも叶ってよかったのかな、と思います。
物語の冒頭と終演だけを見たならば「願いが叶ってよかった」になるのですが、

これまでのエリスとクロの旅を見ていたならば、それが単純な「願いが叶ってよ

かった」にはならない。
だから長い旅という「経験」または「想い」が、こうして終わりを迎える寂寥感

、哀愁感がジーンと心に響くのです。
先ほど読み終わったのですが、思い返すだけで余韻がずっと続いていく。

 

今世間を騒がせている「けものフレンズ」でも感じたことですが、やっぱり旅っ

て良いなぁと。
自分も子どもの頃にプレイした冒険型ゲームで「将来旅をしたい!」と思ってい

たのですが、思い入れがあるせいか旅モノは大大大好きです。
特に「最初は剣かばかりだったけど、数々の事件を通して、今では頼れる相棒!

」みたいな絆の作り方、好きです。
その二人が結局別れてしまう切なさ、もっと好きです。そう思うと、「オリンポ

スの郵便ポスト」は大大大好物ですね。

エリスさん、真っ直ぐ(愚直?)でめっちゃ可愛い。
クロ、頼りになる昼行燈、優しいレイバーって少ないのかな?ガタックは優しそ

うだったけど、寿命の話からすれば今じゃあ少なそうだ。
それで、この二人の掛け合いが凄く可愛らしい。クロが持ち込んだ地上の歌を流

すシーンは思わずニヤリとしてしまいました。エリスさん、やっぱり可愛いです

ね。


これからは物語の構成について自由に書きます。


物語の前半は、何といってもエリスとクロの会話が面白かったです。淡々と交わ

される会話、その間に挟まる自然描写はとても魅力的に感じました。恐らく本当

にいい塩梅で会話文と地の文が組み合わさっています。それに、一人称視点にお

けるエリスの心情が上手く書かれていたため、本人というよりは保護者みたいな

目で見ることが出来ました(何故保護者何だろう?自分でも不思議です)。
自分の中で一番好きな場面は『バイオスフィア』です。エリスの身体の秘密もこ

こで伏線を回収し、しかも「武装解除(パージ)!」とブレードを身体の中から

抜いて戦う。ワクワクしません?自分だけですかね。
中盤はジャック戦でのクロ視点は面白かったです。レイバーの機能を説明するに

はレイバー自身が話した方が分かりやすいですから。三人称視点での話し方でし

た。あのクロ視点はとても良い効果が生まれたのではないでしょうか。でも二つ

の視点をうまく使うのは難しいですね。ただ主人公が別の場所にいるから、だと

読者が混乱してしまうだけなのかもしれません。自戒の意味です、藻野多摩夫先

生は「レイバーの意識の失い方」→「自分が意識を失ったのはこのため」→「現

実」という流れで自然と適合化が図られていました。僕だったら現実→「私が眠

ったのはこういうことだ」→「レイバーの意識の失い方」という流れにしていと

思います。なるほど、こういう順番の方がすんなりと頭に入るのだな、勉強にな

ります。

後半に進むにつれてシリアス調子になっていきました。クロの過去話が回想で出

てきたくらいから、暗さMAXと言った感じでした。過去で起きた伏線を今と繋

げることで、しっかりと「こうだったのかぁ」納得のできる流れでした。クロが

エリスの両親と対面していたのはびっくりですが、どのあたりから気付いたので

しょうか。エリスの家に着いた時点では知らない様子でしたから……。
それと、ジャックの役割は豆の木にエリスとクロを誘導する役でした。何度も何

度も執拗と行く手を阻むレイバーですが、最後は幸せだったのでしょうか。ダミ

ーパーソナリティが導入されて殺戮機械と化した彼でしたが、豆の木の上でにや

りと笑って……あぁ、このシーンだけでも挿絵が欲しい!自分の想像力の無さを

悔やむばかりです。ジャックもまた、良いキャラしていましたね。もっと喋って

欲しかった、彼自身の心境や掛け合いをもっと書いて欲しかったとは思います。


長々と思ったことを書いていますが、終わった時には全てが名残惜しい。一巻で

終わるにはもったいない作品だと思いました。しかし、この読後の余韻は一巻だ

からこそ生まれるもの。何というジレンマ。悲しいなぁ。
冒頭にも書きましたが、冒険型ゲームをやって感じたこととして、やはり後日談が欲しいところ。
その後に主人公はどうなったのか?世界はどうなったのか?戻ってきた時に周り

の人はどんなことを言っていたのか?
この物語を読み終えた時に、痛烈に感じました。勿論自分で想像はしましたが、

エリスが希望に向かっている姿を見せて欲しかったです。
でも、作者が言わなくても分かっていることですね。今まで出会ってきた人たち

から手紙をもらって、それを糧に今日も郵便配達員として働いているのでしょう

。それこそ、父親が言ってたように火星を緑で、希望で満たすのでしょう。
はー、本当に続きが気になる。これほどまでに物語に引き込まれたのは久しぶり

です。

 

最後に。

旅ってやっぱり良いもんだ。


※どうやら続編が出るようです。やったね!


陽緋